スピーキング(実力そのもの)をつくるSTEP表
英会話力は、「英語力があるかどうか」だけではなく、どの段階で負荷がかかっているかによって必要な練習が変わります。
この進度表は、英語をリアルタイムで動かす力を整理したものです。
現在どの段階にいるのか、どこで止まりやすいのかを確認しながら、ご自身に必要なトレーニングを考える際の参考としてご覧ください。
なお、実際の英語コミュニケーションでは、スピーキング力だけでなく、非言語コミュニケーションやコミュニケーション戦略、マインドセットなども大切になります。
そのため、この進度表はあくまで一つの目安としてご活用ください。
スピーキング力(実力そのもの)をつくるステップ
STEP1 出力の土台づくり
(英会話5プロセス:④英文化)
まずは、頭の中にある英語の素材を活性化し、英語の語順で出力する土台を作る段階です。
```- 中学英語レベルの構文や単語を、「考えずに」「意識しなくても」口から出せる状態を育てる
- 英語の語順や文型を身体に定着させる
- 手持ちの単語や構文を、必要な時に取り出せる状態を育てる
- 例文を暗記して再現するのではなく、その場で組み立てる感覚を育てる
- 頭の中にあるイメージを、英語の語順で表現することに慣れる
※この段階では、例文や口頭英作文、瞬間英作文などを活用しながら、英語の語順で考え、出力するための土台づくりを行います。
```
STEP2 運用①
(英会話5プロセス:③概念化+④英文化)
日常的・具体的な内容を英語化する
頭の中にある考えや伝えたい内容を、その場で英語に変換しながら運ぶ力を育てる段階です。
```英語化
- 頭にある概念(アイディア)を英語の語順で出力する回路を育てる
- 概念 → 日本語 → 英訳ではなく、概念 → 英語の語順で出力する感覚を強化する
- 「日本語で考えてから英語にする」状態を少しずつ減らし、英語モードで話す時間を長くする
瞬発力
- 伝えたい内容のコアメッセージを瞬時に捉える
- コアメッセージを手持ちの単語や構文を使って最速で出力するルートを探す回路を育てる
- 「正しい英文を思い出す」のではなく、手持ちの単語や構文を使って自力で英文を組み立てる感覚を強化する
シンプル化
- 「複雑」よりも「簡潔で明瞭に伝える」ことを優先する回路を育てる
- 言い換え、回避、単純化をしながら、止まらずにコアメッセージを伝える回路を育てる
リアルタイム処理
- 英文を作る際に生まれる間や沈黙を減らしていく
- スピードや瞬発力を高め、英語をよりスムーズに運べる状態を目指す
- 一文がしっかり脳内で完成してから話すのではなく、かたまりごとに、未完成でも英語の語順で話し始め、付け足しながら前に進む感覚を育てる
- 小さなミスや、より良い表現を探すための言い直しを減らし、先に進む習慣を作る
- 英文の複雑さや極端な正確さよりも、相手にとっての聞きやすさ・分かりやすさを優先する
※この段階では、「知っている英語」を「使える英語」に変えていきます。英語を正確に作ることだけではなく、限られた手持ちの単語や構文を使いながら、自分の考えをリアルタイムで伝える力を育てていきます。
```
STEP2+ 会話の流れ・実況感
(英会話5プロセス:③概念化+④英文化)
流れや途中経過を英語化する
```- 出来事を「要約」だけでなく、流れや感覚を含めて話す
- 完成した内容だけでなく、考えや感覚の途中経過も自然に話す
- 日本語では自然に行っている思考や出来事の流れを、英語でも表現する
- 難しい表現ではなく、手持ちの英語を使いながら流れを運ぶ
- 文と文をつなげながら、会話を止めずに進めていく
- 結論が明確になっていなくても話し始めることができる
STEP3 思考整理と発信
(英会話5プロセス:③概念化〔高負荷〕+④英文化)
自分の考えや意見を整理しながら、即興で発信する力を育てる段階です。
```
思考整理
- 日本語であっても少し考える必要のあるテーマや正解のない問いについて、自分の考えを整理しながら話す
- 話しながら考えを整理し、内容を組み立てる
- 伝えたい内容の優先順位をつけながら話す
即興性・瞬発力・話し続ける力
- その場で意見を求められたり、答えが用意されていない質問を受けたりしても、考えながら対応することができる
- 考えが完全にまとまる前から話し始め、話しながら内容を組み立てることができる
- 沈黙や長い間を減らしながら、自分の考えを発信することができる
- その場をホールドして、話し続けることに慣れる
発信力
- 英語の論理展開を使いながら、自分の考えを分かりやすく伝える
- 理由や具体例を加えながら説明する
- 自分の見解や提案を相手に伝える
- ビジネスや専門分野に関する内容について、自分の考えを発信する
- 興味関心や価値観など、自分にとって意味のあるテーマについて対話できる力を育てる
コミュニケーション
- 英文としての複雑さや難しさよりも、相手にとっての分かりやすさを優先する
- 相手に伝わる形で内容を整理・構成する
英語コミュニケーションを支える力
※これらはSTEPとは別に、すべての段階で並行して育てていく力です。
① 非言語コミュニケーション
- 相手の話の聞き方
- 相槌やリアクション
- 間の取り方
- 話すスピード
- 表情や反応
- 安心感や存在感
② コミュニケーション戦略
- 分からない時に確認する(Clarification)
- 認識のズレを確認する(Confirmation)
- うまく伝わらなかった時に修正する(Repair)
- 適切なタイミングで会話に参加する(Turn-taking)
- 質問を使いながら会話を深める
- 相手の話を受けて話題を広げる
③ 英語コミュニケーションを前向きに支えるマインドセット
- 英会話を学習対象や評価対象ではなく、コミュニケーションのためのツールとして捉える
- 英語話者としての自己理解を深め、自分なりの理想のスピーカー像を持つ
- 英語であっても無理に自分を変えることなく、自分らしいコミュニケーションのあり方を見つける
- 英語を話すことへの不安や緊張との付き合い方を学ぶ
- 完璧さや英語力そのものではなく、相手とのコミュニケーションや会話の内容・目的に意識を向ける
補足
STEP2+について
```STEP2+では、
「完成した内容」だけでなく、
考えや感覚の途中経過を自然に話す感覚も大切にしています。
例えば、
「今日は忙しかったです」
だけではなく、
「朝から次々仕事が入ってきて、気づいたらもう夕方で、『え、もうこんな時間?』と思いました」
のように、
出来事の流れや、その時に考えたこと、感じたことも含めて話していきます。
私たちは日本語では普段から、
出来事の流れや思考の流れを自然に話しています。
しかし英語になると、
「正しく話そう」
「良い表現を使おう」
とするあまり、結果や結論だけを伝えようとしてしまうことがあります。
STEP2+では、
難しい表現を増やすことではなく、
手持ちの英語を使いながら、
日本語では自然に行っている思考や出来事の流れを英語でも運べる状態を目指します。
そのため、このフェーズでは、
「正しい英文を完成させてから話す」
のではなく、
「頭の中の流れを英語で運ぶ感覚」
を大切にしています。
STEP3について
```STEP3では、日本語であっても少し考える必要のあるテーマや正解のない問いについて、瞬発力を持って自分の考えを整理しながら話す力を育てていきます。
実際のビジネスの現場では、
「この件についてどう思いますか?」
「どちらの案が良いと思いますか?」
「なぜその判断をしたのですか?」
「他に方法はありますか?」
といったように、自分の考えや見解を求められる場面が少なくありません。
また、英語を通して人と深く関わるようになると、
仕事だけでなく、
価値観や人生観、
大切にしていること、
将来についての考え
など、正解のないテーマについて話す機会も増えていきます。
こうした場面で多くの方が苦労するのは、英語そのものではなく、「何を伝えるか」をその場で組み立てることです。
考えが完全にまとまるまで待ってしまったり、より良い答えを探そうとして沈黙が長くなってしまったりすることで、会話の流れが止まってしまうこともあります。
STEP3では、
考えが完全にまとまる前から話し始め、
話しながら内容を整理し、
相手とやり取りを続ける力
も育てていきます。
この段階では、英語そのものだけでなく、「何を伝えるか」を即興で組み立てる力も必要になります。
そのため、英会話5プロセスの中でも特に③概念化への負荷が高くなります。
STEP3では、
英語で話すことだけでなく、
考えを整理し、
自分の言葉で発信し、
相手と意見を交わす力
を育てていきます。